【獣医師監修】犬にダイエットは必要?始める基準から効果的な方法まで解説

2025年6月13日

人間と同じように、犬にとっても肥満は病気の原因になります。
愛犬に末長く健やかな生活を送ってもらうためには、飼い主さんが肥満の状態を正確に把握し、適切にダイエットさせることが大切です。

この記事では、犬のダイエットについて、始める基準から効果的な方法まで解説します。

犬のダイエットを始めるべき基準とは


「愛犬にダイエットが必要かな?」と思ったら、以下の2点をチェックしてください。

・1歳〜1歳半のときの体重と比べる
犬の成長期は、小・中型犬で1歳くらいまで、大型・超大型犬で1歳半くらいまでといわれます。

成長期を過ぎた犬の体重は大きく増えることがないので、1〜1歳半のときと比べて体重が15%以上増加している場合は、肥満の可能性があります。

・BCS(ボディコンディションスコア)と照らし合わせる
BCSは、動物病院でよく用いられる犬の肥満を判断する指標です。引き続きBCSについて詳しく解説していきます。

BCSについて
BCS(ボディコンディションスコア)とは、犬が標準体型かどうかを確認するための指標で、痩せすぎから太りすぎまでの5段階評価になっています。

目で見たり手で触れたときの犬の体型が評価ポイントになっているので、獣医師はもちろん、飼い主さん自身でもチェックすることができます。

BCSの測定方法とは
BCSの測定は、以下のように目視と触診により行います。

・目視による確認
犬を立たせた状態で上と横から見て、ウエスト部分にどのくらいくびれがあるか確認します。

・触診による確認
ウエスト部分を触り、どのくらいくびれがあるか確認します。また、肋骨と腰骨も触り、どのくらい骨が浮き出ているか確認します。

BCSの判断基準とは BCSの判断基準は以下の通りです。

BCS 評価 目視・触診の様子
1 痩せすぎ 遠くからでも肋骨などの骨がはっきり見られ、上から見ると腰がくびれて砂時計のような体型。 触ることのできる脂肪がない。
2 痩せている 肋骨が少し浮き出ている。
多少脂肪があるが、簡単に肋骨に触れられる。
3 標準 余分な脂肪はなく、なでると肋骨に触れられる。 横から見るとゆるやかにウエストが細くなっている。
4 やや肥満 脂肪に覆われていて見た目では肋骨が確認できない。
上から見ると多少のくびれがあるが、横から見ると腹部が垂れ下がっている。
5 肥満 分厚い脂肪に覆われていて触れても肋骨が確認できない。
上から見るとくびれがなく、横から見ると腹部が垂れ下がっている。

犬の肥満の原因とは



運動不足である
飼い犬の多くが、犬が本来必要としている運動量をこなせていないといわれています。

日ごろ散歩に連れて行っているという場合でも、遊ぶことが目的の散歩と、健康維持が目的の散歩は別物です。

歩くスピードやコースなど、散歩のやり方を見直す必要があるケースは少なくありません。

摂取カロリー過多である
食事で1日に必要なカロリーを摂取したうえで、おやつも食べさせている場合、カロリーオーバーにより太ってしまいます。

また、おやつは滅多にあげず、ドッグフードもパッケージに記載されている給餌量通りにあげているという場合でも、実はカロリー過多になっているケースがあります。

記載されている給餌量はあくまで目安量で、犬種や体重、運動量によっては食べ過ぎの可能性もあるからです。
特に避妊・去勢手術後は基礎代謝が1割ほど落ちると言われているため給与量の調整が必要な場合があります。

飼い主の心構えから問題
室内飼いが主流となり、犬と飼い主さんの生活空間が一緒になった現代では、愛犬が飼い主さんの食事風景を目にする機会が多くなっています。

そのため「自分も飼い主さんと同じ食べ物が欲しい」と要求する犬は多く、それを簡単に受け入れてしまう飼い主さんが少なくありません。

また、人間の食べ物と同じく、おやつを要求されるがままに、たくさんあげてしまう飼い主さんもいます。

犬と飼い主さんの距離が近くなった現代だからこそ「甘やかすだけが愛情ではない」という飼い主さんの心構えが、肥満予防のためにより必要になっています。

遺伝的に太りやすい犬種である
犬には遺伝的に太りやすい犬種があることが分かってきました。
・キャバリア
・パグ
・ゴールデンレトリバー
・ビーグル
・ミニチュアダックスフンド
など

どの犬種でも太らせないことが大切ですが、これらの犬種の場合はこまめに体重を測るなど特に肥満に対して意識して過ごせるといいですね。

犬の肥満が引き起こす病気



関節炎
体重が重くなると、関節への負担が増えて関節炎のリスクが高まります。

特に、「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)・通称パテラ」を起こしやすい犬の場合は、 そのものの重症化や前十字靭帯断裂が併発してしまうこともあります。
このような場合、歩くときなどに後ろ足を地面につけずに持ち上げて歩くような症状がみられます。

呼吸器疾患
肥満による脂肪で気道が圧迫されると、呼吸がしづらくなります。
また、重度の肥満の際は気管虚脱の一因になってしまうことも。
パグ・シーズー・フレンチブルドッグなどの短頭種は、生まれつき気道が狭いのでより一層の注意が必要です。

椎間板ヘルニア
体重増加により椎間板に負担がかかると、椎間板ヘルニアを引き起こす可能性があります。
特に、ダックスフンド・コーギー・フレンチブルドッグなどの犬種で起こりやすいといわれるため、注意してください。

心臓病
増えた脂肪に血液を送るために、心臓の負担が増えると、心機能障害や高血圧のリスクが高まります。

内分泌疾患
肥満により犬が糖尿病になることは少ないといわれます。
ただし、すでに糖尿病を発症している犬の場合は、太ることで病気が進行してしまいます。糖尿病の愛犬は、一層の体重管理を必要とします。

効果的な犬のダイエット方法



肥満は病気の原因にもなります。1〜1歳半のときより体重が増えていたり、BCSで肥満に当てはまった愛犬は、ダイエットをさせましょう。
引き続き、犬のダイエット方法について解説します。

運動療法
・毎日散歩する
毎日の散歩によりエネルギーを消費することは、ダイエットに有効です。

ただし、いきなり激しい運動をしてしまうと関節に大きな負担がかかってしまいます。食事の見直しなどで理想の体重に近づいてきたら運動も組み合わせていきましょう。

愛犬が散歩を嫌がるケースもまれにありますが、庭や公園を少しずつ歩かせることからはじめ、ゆっくりと慣れさせて習慣化出来るといいですね。

・散歩の時間を見直す
犬が1日に最低限必要とする運動時間は、小型犬で15分・中型犬で30分・大型犬で60分といわれています。

散歩にかけている時間がこれより少ない場合は、増やしてあげましょう。

ただし、上記の時間はあくまで目安です。
愛犬の年齢や健康状態によっては、時間を調節してあげることも必要です。

・散歩コースを見直す
「散歩の時間を見直す」で紹介した運動時間を、現在の散歩コースで満たせない場合は、コースを変更してみましょう。
可能であれば、坂道あるコースにすると、エネルギー消費量が増えてダイエットにより効果的です。

・散歩のスピードを見直す
健康維持を目的として散歩をするなら、歩くスピードを見直すことも大切です。

人間が1.6kmの距離を歩くのにかかる時間は15分程度といわれています。 犬と人間の歩くスピードに極端な差はないので、このスピードを一つの目安として歩いてみると良いでしょう。

ただし、体力のない子犬や老犬・歩幅のせまい小型犬・健康状態の悪い犬の場合は、無理せず調節してあげてください。

・体を動かす遊びをする
体を動かす遊びを積極的にすることも、ダイエットに有効です。

水泳・ボール遊び・フリスビーなど色々な遊びがあるので、犬種・年齢・身体能力・好みに合わせたものを選んであげましょう。


食事療法
・ごはんの摂取カロリーを見直す
飼い主さんの中には、ドッグフードを袋から目分量でお皿に入れて、愛犬にあげている人がいます。

このやり方だと、愛犬にどれくらいの量のごはんをあげているのか把握できず、カロリーオーバーになってしまう可能性があります。

安いもので構わないので計量器を買って、フードをはかり取るようにしましょう。
また、フードの量を減らしてゆで野菜などでかさ増ししてあげるのも、摂取カロリーを減らす方法として有効です。余裕があれば試してみても良いでしょう。

・食事回数を増やす
ワンちゃんは性質上、同じ量のご飯でも複数回に分けて与える方が満腹感が持続し、空腹を感じる時間を減らすことができると言われています。

こうすることで、空腹の時間が短くなるので、必要以上にごはんやおやつを欲しがらなくなります。

・ドッグフードを替える
運動不足が気になる愛犬には、カロリーが控えめのフードを与えるのがおすすめです。
また、極度に肥満が進んでいる場合は、ダイエット用の療法食に切り替えた方が良いこともあります。
動物病院を受診して、療法食が必要か判断してもらいましょう。

・人間の食べ物を与えない
人間の食べ物は、犬にとってはカロリーが高く太る原因になってしまいます。

また、味の濃い人間の食べ物に慣れてしまうと、ドッグフードを食べなくなってしまう可能性もあります。
人間の食べ物は極力与えないようにしましょう。

・おやつを与えすぎない
1日に必要な量のごはんを食べたうえでおやつも食べると、カロリーオーバーになってしまいます。

ダイエット中のおやつは、長いお留守番ができたときや動物病院に行ったあとなど、ここぞというときにだけあげるようにしましょう。

NGな犬のダイエット法

愛犬をダイエットさせたいがあまり、急激に運動量を増やしたり食事量を減らす飼い主さんがいますが、これはNGです。
犬の体に負担がかかって、健康面での問題を引き起こす可能性があります。
また、ダイエットによるストレスで問題行動を起こすようになる犬もいます。
愛犬の様子をみながら、長期的に取り組むことが必要です。

犬のダイエットが成功しない要因

犬のダイエットが成功しない大きな要因として、以下の2つのことがあげられます。

・自己流でダイエットさせている
飼い主さんが考えたダイエット方法が、愛犬に合っていない可能性があります。

ダイエットを始める前に、一度獣医師に愛犬の様子をみてもらい、どの程度のダイエットが必要かなどアドバイスをもらうと良いでしょう。

万が一、病気が原因で太っている場合は、その病気を発見することにもつながります。
また、ダイエット中も経過を獣医師と共有しましょう。プランの継続や見直しがしやすくなります。

・体重そのもので考えてしまう
急激に体重を減らすことは犬の体にとっても良くないため、1週間で現在の体重の1~1.5%を減らすことが目安と言わており、犬のダイエットは長期的に取り組むことになります。

犬は私たちより体が小さいため、犬の体重を人で換算すると、犬の大きさにもよりますが、犬のダイエットの1㎏は、人の5~10㎏に相当します。

そのため、「こんなに頑張ったのにたった数百グラムしか減らない…」と思っても犬の体重に換算すると大きな一歩となります。

ダイエットの際は、体重における割合で考えると増減がより分かりやすくなるかもしれません。

犬がリバウンドしてしまう要因

犬がリバウンドする大きな要因は、飼い主さんの「気のゆるみ」です。

ダイエット中は、食事制限や運動など、それまでの生活に比べて愛犬に我慢をさせていると感じることが多くなります。

「ダイエットに成功したから、ちょっとだけ…」と、おやつをあげたり人間の食べ物をおすそ分けしたくなる飼い主さんの気持ちは、愛犬家なら痛いほどよくわかります。

しかし、その「ちょっとだけ」が積み重なって愛犬が太ってしまったら、もう一度いちからダイエットをしなければいけなくなります。

おやつは低カロリーなものを選ぶ・人間の食べ物は与えないなど、ダイエットに成功したあとも食生活に気をつけてあげましょう。また、食事だけでなく適度な運動をさせることも忘れないでください。

ごはんを食べたらほめてあげる・運動後はマッサージをしてあげるなど、愛犬がストレスなく続けられるように工夫していきましょう。

コメント

アメリカの「ペット肥満予防協会(APOP)」が2018年に行った調査によると、犬の55.8%は過体重または肥満状態にあるそうです。

室内飼いが一般的になっている現代では、犬の肥満を防ぐのが難しくなっています。
飼い主さんには、犬が肥満になる原因やリスクをしっかりと理解し、適切にダイエットさせることが求められます。

今回の記事を参考に、愛犬の肥満予防やダイエットに取り組んでみてください。



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