【獣医師監修】犬のせきの原因は?考えられる病気と対処法を解説

2025年7月16日更新

人間と比べると犬はせきをすることが少ない生き物です。そのため、愛犬がせきをする姿を目にして心配になってしまう飼い主さんは少なくありません。

犬のせきは「カハッ」という乾いたものが一時的に出て、すぐに治るなら病気が原因とは限りません。
しかし、毎日のように出る場合や時々せきを繰り返している場合は、病気が潜んでいる可能性があり、注意が必要です。

この記事では、犬のせきについて原因と対処法を解説します。

犬のせきの原因とは?

犬のせきの原因は「生理現象」によるものと「病気」によるものとに、大きく分けられます。

・生理現象によるせき
気道に刺激があったときや、異物が入ったときにみられます。

ホコリや冷たい空気を吸い込んだ・水やごはんにむせた・リードを引っ張りすぎて首が圧迫された・興奮して息があがったなどがきっかけで起こります。

生理現象によるせきは「カハッ」という乾いた音がするのが特徴です。
すぐにおさまることが多いので、それほど心配することはありません。

・病気によるせき
せきが何日も続く・せきが止まらない・呼吸が早い・食欲や元気がない・口の中や舌が蒼白や紫色(チアノーゼ)になっているなどの症状が見られる場合は、病気によりせきが出ている可能性があります。

せきの原因となる病気については引き続き詳しく解説していきますので、参考にしてください。

犬のせきから疑われる病気とは

せきが続く場合や、せきのほかに普段と違う様子がみられる場合は、病気が原因の可能性があります。

犬がせきをしているときに疑われる主な病気を7つ紹介します。

異物誤飲・誤食
おもちゃの切れ端や文房具類など、異物を飲み込んだことが原因でせきが出ることがあります。のどや気管に詰まってしまうとせきだけでなく、呼吸困難になってしまうこともあります。
せきなどが見られなくても、食べ物以外のものを飲み込んでしまった時は早めに動物病院を受診しましょう。

ケンネルコフ
子犬をお家に迎え入れた後、せきやくしゃみ、鼻水などが見られたらケンネルコフの可能性が高いかもしれません。ケンネルコフは伝染性の呼吸器疾患の総称で「伝染性気管支炎」と呼ばれることもあります。
免疫力がまだ弱い子犬がウイルス・細菌・マイコプラズマ属菌などに感染することで引き起こされます。

しつこく続く乾いたせきや発熱などが主な症状ですが、悪化すると気管支炎や肺炎を引き起こすこともあります。混合ワクチンを接種することで、万が一感染してしまっても重症化するのを防ぐことができます。

気管虚脱
呼吸をするときに気管が途中で潰れてしまう病気で「ガーガー」と、ガチョウが鳴くような音がするせきが特徴です。喉のあたりを触った際や興奮した時にせきが出る傾向があります。

また、お散歩中にリードを引っ張られた際、首輪があたることでせきが悪化してしまうという様子が見られることもあります。

はっきりした原因はわかっていませんが、チワワ・マルチーズ・ポメラニアンなどの「トイ種」や、ブルドッグ・パグなどの「短頭種」で多く発症することから、遺伝的素因が関係すると考えられています。

肺炎
ウイルス・細菌・真菌などへの感染や誤嚥などにより、肺が炎症を起こす病気です。

せきのほかに、発熱・吐き気・呼吸困難などもみられます。
ひどい場合は、呼吸困難により口の中が蒼白や紫になるチアノーゼが起きることもあります。

特に、飲み込む力の弱い子犬や老犬では、水やフードが気管に入って「誤嚥性肺炎」を起こす可能性があり、注意が必要です。

フィラリア症(犬糸状虫症)
フィラリアが心臓に住み着いてしまうことで、心臓に悪影響を与えてしまう病気です。始めは無症状ですが、次第に疲れやすい(運動不耐性)やせきという症状が見られます。

また、幼虫が原因となりアレルギー性の肺炎を引き起こし、呼吸困難になってしまうことも。
お薬で予防できる病気です。しっかりと予防してあげましょう。

心臓病
犬の心臓病では「僧帽弁閉鎖不全症」という病気が多く見られます。血液が逆流して心臓に負担をかけた結果、心臓が大きくなり、気管や気管支が刺激されて乾いたせきがでます。

悪化すると肺の中に液体が溜まってうまく呼吸ができなくなる「肺水腫」という状態になります。肺水腫になると湿ったせきが出て、場合によっては呼吸困難を起こし、命に関わることもあります。

初期の心臓病では目立つ症状がなく、健診の際の聴診で心臓の雑音が見つかることがほとんどです。キャバリア・キング・チャールズスパニエルは、高確率で雑音が見つかるため、特に注意が必要です。

鼻炎
感染症・アレルギー・腫瘍などにより、鼻の粘膜が炎症を起こしている状態です。

鼻水が刺激となってせきが出ることがあります。鼻水は最初はサラサラしていますが、放置しているとネバネバとしていき、場合によっては膿(うみ)や血が混じることもあります。

犬がせきをしている時の対処法

犬がせきをしているときには、以上のような病気が考えられます。もしせきの他に以下のような症状がみられる場合は、呼吸困難を起こしている可能性があります。

「少し様子を見てみようかな…」という間にも呼吸が出来なくなってしまい、最悪の場合死にいたることもあるので、普段とは違う呼吸の様子が見られたら早急に病院に連れて行ってあげてください。


努力呼吸(通常時と比べると胸や肩を大きく動かしながら行う呼吸)

体を横倒しや伏せることができない

口の中や舌が、紫色になっている(チアノーゼ)


また、これらの症状がみられない場合でも、毎日のようにせきが続く・痰が絡むようなせきをしている・発熱や嘔吐などせき以外の症状を伴う場合は、病気にかかっている可能性があります。

犬は気道の性質などからせきが少ない生き物です。犬のせきは病気のサインの可能性があるので、数日でもせきが続く場合は、異常があると考えて、病院に連れていきましょう。

まとめ

犬がせきをしたときに、様子見でいいか病院に連れていくべきかを判断する一番の決め手は、せきが一過性のものであるかどうかです。 犬のせきには、病気が隠れている可能性があるため、病院に連れていってあげてください。

受診時に愛犬がせきをしている動画があると、診断の助けになります。余裕があればスマホなどで撮影しておくと良いでしょう。

今回の記事が、愛犬の健康を守る助けになれば幸いです。



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