【獣医師監修】犬の涙やけの原因とは?対処法と予防法を解説

2025年9月24日更新

目の周りが茶色く変色してしまう犬の涙やけ。
動物病院でもよく相談をされることの1つです。

実は、犬の涙やけは見た目だけの問題ではなく、毛が濡れてしまうことで皮膚を悪くしてしまったり、 原因によっては目にトラブルが生じてしまうこともあります。
飼い主さんは、しっかりと原因や対処法を知っておきたいところです。

この記事では、犬の涙やけについて原因から予防法まで徹底的に解説します。

犬の涙やけってなに?

犬の涙やけは、目の周りの毛が涙によって茶色く変色してしまう状態のことです。
涙が目からあふれてしまう症状は「流涙症(りゅうるいしょう)」と呼ばれ、原因は大きく分けると以下の3つです。

・涙の過剰分泌によるもの
何らかの原因により涙が過剰に生産される状態です。

・涙の排泄経路の異常によるもの
涙の通り道に異常がある状態です。
本来涙は涙腺から分泌され、涙点というまぶたにある穴から吸い込まれ、最終的には鼻腔に流れ込んでいきます。この通り道に異常があると、涙が鼻にうまく排泄できずにあふれてしまいます。

・眼表面への涙の保持能力低下によるもの
眼表面に涙を保持できなくなる状態です。
涙は、まぶたにあるマイボーム腺から出される脂により、眼の表面に保持されています。
このマイボーム腺の機能が何らかの原因により低下すると、眼表面に涙が保持できずにあふれてしまいます。

犬の涙やけの原因とは?考えられる病気は?

犬の涙やけの主な原因を紹介します。関連する病気についても記載しますので、参考にしてください。

ゴミや抜け毛が目に入る

異物が目に入ると、それを取り除こうとして涙が過剰に分泌され、涙やけを起こすことがあります。
ホコリやゴミ、飼い主さんが吸うタバコの煙、犬自身の毛などが原因になります。 特に、毛が生え変わる「換毛期」には、自分の抜け毛により涙やけを起こすこともあります。

逆さまつげ

逆さまつげとは、内反症とも呼ばれ、本来は外側に向かって生えるはずのまつ毛が内側に向かって生えてしまう状態のことです。

まつ毛が眼の表面に当たるため、涙の量が増えて涙やけを起こすことがあります。 逆さまつげの原因としては遺伝的素因が関係していると考えられていて、トイ・プードル、チワワ、シー・ズーなどの犬種でみられやすいです。

アレルギー

犬も人間と同じように食べ物、花粉、ノミ、ダニなどに反応して、アレルギーを起こすことがあります。

アレルギーにより結膜炎や鼻炎が引き起こされると、涙の分泌量が増えて涙やけの原因になります。

結膜炎になると目が充血して赤くなったり、ネバネバした目やにが出るなどの症状が、鼻炎になると鼻水やくしゃみなどの症状がみられます。

鼻涙管閉塞

目から鼻にかけての涙の通り道である「鼻涙管」が塞がっている状態です。

涙を鼻に排泄できず目からあふれてしまうため、涙やけを起こすことがあります。

鼻涙管閉塞は、鼻涙管の入り口となる涙点が先天的に欠損している場合や、老廃物の詰まり、結膜炎、腫瘍、外傷などがある場合にも引き起こされます。

マルチーズ、プードルなどの犬種で発生しやすいことから、遺伝的な素因が関係すると考えられています。

一部で涙やけの原因について語られる説について

老廃物の排出として涙が増える?

「体に蓄積された添加物が鼻涙管を詰まらせる」
こうした説は一部で流布していますが、現時点では獣医学的な裏付けはありません。
老廃物が涙や鼻涙管に直接影響するという証拠は乏しく、通説の域を出ていないと考えられます。

ただし、水分摂取が健康維持に重要なことは事実であり、適切な水分補給を行うことは涙やけの間接的な予防につながる可能性もあるでしょう。

添加物と涙やけの関係について

「添加物を含むフードが涙やけを起こす」という主張もありますが、こちらも科学的根拠が十分とは言えません。

無添加のフードに変えて改善したケースがある一方で、明確な因果関係が示された研究はまだ少ない状況です。

ただし、無添加フードは体質改善や皮膚への影響に配慮した選択肢として有効であり、涙やけ以外の健康面でのメリットも考えられます。体質に合ったフードを選ぶことが大切です。

病院に行くべき危険な症状とは

涙やけとともに以下のような症状がみられるときは、目自体にもトラブルが起きている可能性があります。
かかりつけの獣医師さんに相談してみましょう。

・黄色くドロッとした目やにが出る
・痛そうに眼をしばたたく
・まぶしそうに目を細める
・白目が赤くなる
・顔を擦る、気にする

涙やけ自体は病気ではありませんが、その裏には何らかの病気が潜んでいる可能性があります。

また、そのまま放置していると、涙で濡れた部分が皮膚炎になってしまうことも考えられます。

たかが涙やけと軽く考えず、しっかりと症状を見極めましょう。

涙やけを起こしやすい犬種は?

以下のように、犬には涙やけを起こしやすい種類があります。

・トイ プードル、マルチーズ、コッカースパニエル
生まれつき鼻涙管が閉塞や狭窄していることが多く、鼻涙管閉塞が起きやすいです。

・シー ズー、パグ、チワワなどの短頭種
眼が大きく外に張り出しているため、涙をとどめにくいです。また、鼻付近の毛が眼に触れやすく、異物が入りやすいため、刺激により涙が過剰分泌されることも多いです。

・柴犬、ウェスト ハイランド、ホワイト テリア、ミニチュア ダックスフンド
アレルギーを起こしやすく、結膜炎や鼻炎などのアレルギー症状により涙が過剰に分泌されることが多いです。

これらの犬種の飼い主さんは、普段から涙やけ予防を行うなど注意が必要です。


犬の涙やけの対処法について

涙やけが慢性化する場合、原因として多いのが老廃物による鼻涙管の詰まりです。
ここでは、老廃物により鼻涙管が詰まった場合の対処法を2つ紹介します。

消化吸収・排泄リズムを整える

体に溜まっている老廃物を外に出して、鼻涙管に溜めないようにすることも大切です。

消化・吸収が悪いフードにより便秘を起こすと、体に老廃物を溜め込むことになります。 フードは、消化・吸収の良いものを選びましょう。
具体的には、良質な動物性タンパク質を豊富に含むフードがおすすめです。

目の下の症状を除去する

犬の涙やけは外側からケアすることも大切です。

涙やけの状態を放置していると、皮膚炎を起こしたり、濡れた雑巾のような臭いを発することもあるからです。

クリーナーなど涙やけ専用のケア用品もたくさん販売されているので、そうしたものを利用して拭き取ってあげましょう。

ただし、皮膚が弱い愛犬の場合は、ケア用品に含まれる成分が刺激になってしまうことがあります。心配な場合は、蒸しタオルで固まった部分をふやかし、コームなどでとかしてあげるときれいに取れますので試してみてください。

犬の涙やけの予防法について

後天的なものが原因となる涙やけについては、飼い主さんの努力である程度予防が可能です。

予防法としては、以下のようなものがあげられますので試してみてください。


アレルギー反応や体に合わない食事(一部の添加物など)であればフードを変えてみる

ブラッシングや部屋の掃除をこまめにして、異物が目に入らないようにする

目の周りの毛をカットする


まとめ

犬の涙やけは、それ自体が病気というわけではありません。
しかし、多くの飼い主さんが抱える悩みですが、原因はひとつではなく、犬それぞれの体質や環境が関係しています。中には通説として広まっているものの、科学的根拠に乏しい情報も存在します。

確かな対処を行うには、まずは正確な情報をもとに、わんちゃんの状態をよく観察すること。必要に応じて、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。



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